キミと、光さす方へ
思わず、声が出ていた。


どうしてそんな風に生きているの?


あなたも、あたしと同じ匂いがするのはどうしてなの?


松本くんが途中で言葉を止めたあたしを見下ろして戸惑った表情になった。


あたしは咄嗟に視線を逸らせる。


なにを聞こうとしているの。


あたしは勇人にすべてを打ち明けることができないままなのに。


松本くんに背負っているものはなにか聞こうとするなんて、おこがましい。


そのまま沈黙の時間が流れていった。


あたしもどこか別の場所を探そうかとも思ったけれど、松本くんが動こうとしないからほっておくわけにはいかなかった。


松本くんはどこか危うげで、目を離した隙に窓から身を乗り出して消えてしまいそうな気がした。


それはあたしの思い過ごしかもしれないけれど、それでも動くことができなかった。


そして数分後、男子トイレの中から「あったぞ!」という勇人の声が聞こえてきたのだ。
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