キミと、光さす方へ
「でかした琴江」


勇人は自分のことのように嬉しそうだ。


「でも、ここには右側しかなかったんだよ」


ゴミ箱の中を奥まで確認してみても、もう片方が見つからない。


きっと男子たちは別々に隠したんだ。


「それならきっと近くにあるだろ。俺男子トイレを探してくるよ」


そう言うと勇人の腕を、松本くんが掴んで止めていた。


「いい……。自分で探すから」


この世の終わりでも見えているかのような、暗い声。


「何言ってんだよ。最後まで探すって」


「でも……」


まだ遠慮しようとしている松本くんの腕をそっと押しやり、勇人は男子トイレに入って行ってしまった。


あたしは呆然と立ち尽くしている松本くんを見上げる。


下から見ると髪の毛の隙間からその目を見ることができた。


大きくて丸い、それに睫も長い。


女子たちが黙っていない顔立ちをしているのだと、その時初めて気がついた。


それでも松本くんは自分の顔を隠し、きっと性格も偽って、自分を殺して陰に生きているんだ。


「どうして……」
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