俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~

『夢殿様、早くお逃げ下さい!ここは私が護ります!』

『い、嫌だ!駄目だ!…君を置いて逃げるなんて!僕も…戦うよ!』

『いけません!…その力を解放しては、夢見の力が完全覚醒し、もう後戻りが出来ないのです。…この平和が保たれた時代で、欲深き誰か個人が夢見の力を掌握することはあってはならない。そうすれば、この世界は独裁され、平和は滅びてしまうでしょう。…私は、貴殿がそんな欲深き者の道具になって欲しくないのです!』



懸命に宥め、諭すかのような内容なのだが、男性の方が明らかに切羽詰まっている様子だ。

そして、その返答を聞かず、男性は彼の元を離れて行ってしまう。

手を伸ばしても、届かず。

儚い彼は、その場で自分の体を抱きしめ、泣き崩れるのであった。





『…君は、どっち?』



背後から突然語りかけられ、ハッとする。

振り返ると、そこにはあの儚い彼が立っていた。

その姿を視界に入れ目を見張ると、もう一度問い掛けられる。



『大切な人達を犠牲にして、この世界を護るのか。世界を犠牲にして、自分の手で大切な人達を護るのか……君は、どっち?』


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