やさしいベッドで半分死にたい【完】
考えたくもないことが頭をめぐって、今度こそ俯きかけては、やさしい熱に包まれてしまった。
花岡の腕の中は、どうしてこんなにもあついのだろう。どうして何度でも絶望の淵に立つ私を掬い上げてくれるのだろう。
何の価値もない。まともに仕事をすることもできない。誰かに求められても、応えることすらできない。
応えられるだけ応えようと、必死になっていたはずだった。何かが残っただろうか。
絶望の問いかけに苦笑しかける。それすらも花岡の胸に消えた。
この腕に抱かれて、眠ってしまいたい。おかしなことを考えていた。花岡は、私の思考などすべて無視して囁いた。
希望の言葉だ。
「治るに決まってる」
慰めでも、気休めでもなかった。花岡の言葉には、そうなのだと思わせる力があった。思わず涙がとまってしまう。不自然に自分の呼吸が止まっていたことに気づく。
「どうしてですか?」
「俺がそう思うから、そうなんだよ」
慰めるつもりなんてなさそうなのに、どうしてこんなにも響いて止まらないのだろう。あやす指先が髪に触れた。「絶対に治る」ともう一度力強くつぶやかれて、どうしてか、泣きそうなまま笑えてしまった。