やさしいベッドで半分死にたい【完】
花岡の言葉の意味を何度か考えて、結局まとまらない。ふざけて相手を馬鹿にしたりする人ではないと思う。それならば、本気だというのだろうか。
あまりにも信じがたいと思うのに、どこか胸の内にやさしいひかりが灯ってしまったような気がした。
恋とはどうして厄介なんだろう。
真正面に見えている景色は、湖畔のようだった。湖の水面が、きらきらと揺れている。
何をするつもりなのだろう。
わからないまま後に続いて、すぐ近くに、ボートが五隻ほど、連なっているのが見える。花岡はずんずんとボートの前まで歩き続けて、丸太に括《くく》り付けられている中から、一番奥にある一隻を選んだ。
「えっ、これ、いいんですか?」
「知り合いの爺の道楽だからいい」
「知り合い……?」
ここが花岡の故郷からどれくらいの距離にある場所なのかはわからないけれど、昔、文通の中で深夜にボートを漕ぎに行ったりしていたと書かれていたことがあったと思いだした。
あれはすぐ近くに海があって、友人たちと遊んでいるという意味なのだと思い込んでいた。
確かに、うらやましいと言ったと思う。花岡の記憶力は、未知数だ。
「乗ったことあるか?」
「ないです」
「じゃあ、先に乗る」