やさしいベッドで半分死にたい【完】


「みたいじゃなくて、そうなんだが」

「……心臓に、わるいです」

「そうか」


いたずらが成功した子どもみたいだ。花岡は嬉しそうに笑んで、髪に触れてくる。

結局綺麗に返されて、私がどぎまぎしてしまうだけだった。花岡に口で勝とうとしたって駄目だ。いつも真っ向勝負だから、仕掛ける前に呼吸がとまってしまうだろう。

すぐ近くに顔を寄せて、私の表情をじっと見つめていた。

花岡の頬が緩んでいる。私の顔が赤くなっていることなんて、すっかりお見通しなのだろうか。

抗えないまま、口を開いた。

花岡の匂いが香っている。安心する匂いになってしまった。もうずっと前から、そうだったのかもしれないけれども。


「まじまじ見ないでください。花岡さん、綺麗なお顔だし、緊張します」

「……もっと近くで見せてやろうか」


たっぷりと色気を孕んだような声で囁かれてしまった。

これはすこし、反応を面白がられているのだと思う。たった二日、素の花岡を見せられただけで、もうわかってしまったような気になっている。


「囁かないでください」

「聞こえないだろ?」

「そんなこと、聞こえなくていいですから」

「ほら、あぶねえから手」


さらりと耳に言葉を乗せた。次々に言葉を繰り出して、私の返事を待つことなく指先を攫って、まっすぐに歩き出してしまう。

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