不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。

「こんなもんで怖がる彼女なんて、牡鹿くんかわいそ〜」

「何でこんなブスと付き合ってんのか理解不能だわ」

もう限界だった。僕はドアに手をかけ、勢いよく開ける。怒りでどうにかなってしまいそうだった。

「菜月！！」

菜月は女子二人から羽交い締めにされ、スマホを無理やり見せられていた。海洋恐怖症の人が怖がる画像が映し出されているんだろう。

「お前ら、菜月を離せ！！」

僕に見つかって真っ青な顔をしている女子たちから僕は菜月を奪い、抱き締める。菜月は涙をこぼしながら震えていた。

「お、牡鹿く〜ん。これはただの遊びだよ〜？私たち、菜月ちゃんとは友達だから〜」

苦し紛れにそう言う女子たちを僕は睨み付け、「ふざけるな！」と怒鳴る。女子たちはびくりと肩を震わせた。

「人が嫌がるようなことを平気でするような人を、僕は絶対に好きにならない！僕には菜月しかいない！菜月以上に好きになる人なんていない！絶対に！」