こんな思いを···いつまで

···秋穂


ひまりちゃんから·····


3月20日に入籍をして
大倉の息子と暮らす事になった
と、報告があった。

来るときがきた·····と
思うが····

さっちゃん·····
あなたは、これを望んだの?

違うよね····

博さんが、自分の娘に対して
こんな扱いをするとは
思っていなかったよね。

だけど····なんて···人なの····

我が子を一度も抱かず
まして、この世に生まれでた我が子を
憎み・蔑み・恨み···
病院へ放置して
亡き妻のそばに付きっきりで···

葬儀が終わっても
四十九日が終わっても
娘の安否を気にする事なく···放置

ひまりちゃんは、
博さんの母・菫さんの手で
育てられた。

その母・菫さんが亡くなった時も
弔問者や親族の前で
言葉の限りに
ひまりちゃんを罵り
烈火のごとく怒鳴り付け
母・菫さんの家から追い出した。

私は、菫さんが亡くなる一ヶ月前に
手紙を頂いていた。

私と嫁の五月(さつきことさっちゃん)が
仲良しであることを知り
ひまりちゃんの事を頼まれた。

自分の息子のあの態度に
どれほど心を痛めていたのだろう···
菫さんの手紙には
ひまりちゃんの事を
気に病み····
どうか、ひまりの力になって欲しいと
懇願されていた。

私は、病院を訪ね
「必ず、守ります。」
と、伝えると
菫さんは、涙を流しながら
ホッとされた顔をしていた。

あそこまで
自分の血が流れる娘を嫌う事が
できるのだろうか·····
何もしていない、
ただ産まれ出でただけの
娘に····

両親の愛情をまったく知らずに
育つなんて····

菫さんは、そんなひまりちゃんを
甘やかして育てたいのを我慢して
ひまりちゃんが、この先困らないように
財閥の娘としての知識、教養の全てを
教え、その中でひまりが興味をもった
ピアノを習わせた。


ひまり····ちゃん·····

幸せになって欲しい····のに·······

私は、それすら···できないなんて···

鮎川さんが····

大倉の息子が····

あの娘をこれ以上

傷つけたら

その時は····必ず····必ずや·····守る···
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