こんな思いを···いつまで

···翼


婚約者であっても
一度も食事も、
出掛けたこともなかった。

婚姻届の証人欄には
父と鮎川の総帥の名前が書いてあった。

会社の専務室で
先ずは、俺が記入して
彼女が書いた。

それを一度
俺が確認をして
彼女・ひまりに
提出してもらうことに

「一緒に行こうか」
と、言ったが
「専務は、お仕事あるので
私、一人で大丈夫です。
その後、引っ越しがありますので
本日はお休みをさせて
頂いておりますので」
と、坦々と言う彼女に
「わかった。
鍵は、渡してあるのかな?」
と、秘書に訊ねると
「はい。奥様にお渡し致しました。」
と、秘書が言うと
「はい、お預かりしております。
一部屋頂いて良いとの事
でしたので、そうさせて頂きます。
それでは。」
と、言うと彼女は俺と秘書に
頭を下げてから
専務室から出て行った。

秘書が、ひまりに見とれていたから
「おいっ、おい、仕事。」
と、怒鳴ると
慌てて、仕事をやり始めた。

まったく、そっけない女で
やっていけるのかと
心配になる。

いくら顔が整っていても
あれじゃーな·····ロボットと
いるみたいだ。

三月になるまでは
一週間の内3日は、静の部屋で
過ごしていた。
土日もだが····

昨夜は、朝まで静が離れずに
ずっと身体を繋いでいた。
さすがに、明け方には
腰に痛みがあったくらいだ。

明日からは、しばらく
この部屋には
来れないと話をしていたから·····か····




だが、この日の事で···
父と俺の浅はかな考えが····
大きな痛手となるなんて
思ってもいなかった。
< 30 / 69 >

この作品をシェア

pagetop