Xmas eve in2020
「あれ?斎藤さんに何を恥ずかしい愚痴言っちゃってるんだろうな。ごめんな。」


ふと我に返ったように、慌てて河嶋さんは言うけど


「いえ、河嶋さんのおっしゃってること、わかります。」


私は、そう答えると


「斎藤さん。」


驚いたように、河嶋さんが私を見る。


「私も、今日売場で、仕事帰りのご夫婦やカップルが、仲良さそうにおうちパ-ティの準備の買い物している姿を見て、いいもんだなぁって思ってましたし、マネ-ジャ-やパートさん達が、仕事を終えて、いそいそと嬉しそうに帰って行く姿を見て、羨ましいと思ってましたから。」


そう言い終わった私は、河嶋さんを見つめる。一瞬の間があったあと


「じゃ、お互い、頑張らないとな。」


と河嶋さんが言う。


「えっ?」


「お互いクリぼっちは、今年で卒業して。来年は素敵なイヴを、究極の濃厚接触で過ごせるように、な。」


なんて言いながら、顔を赤くして、私から視線を外す河嶋さん。私も思わず、同じように視線をそらし、なんとも言えない沈黙の時間が流れる。


「俺はさっきから、何を言ってるんだろうな・・・。」


やがて、そう独り言ちた河嶋さんは


「夕飯どうするの?」


と空気を変えるように聞いて来る。


「これです。」


と恥ずかしそうに、膝の上の箱を指差すと


「えっ、ケーキ?」


とやっぱり驚かれる。


「はい。社員として1個くらい買うのは当たり前だと思ってますし、甘い物は大好物なんですけど・・・これ1人で食べるの、結構厳しくて・・・。」


「そっか、そうだよな・・・。ごめん、僕、甘い物が苦手なんで、ケーキの社販協力してないから・・・。」


「いえ、そんな大丈夫です。河嶋さんには恵方巻とか、他の時に買っていただいてますから。」


申し訳なさそうに謝られて、私は慌てて首を振る。


「そうだ、社販で思い出したけど、年賀状印刷申し込んでくれてたよね。」


「は、はい。」


「もう出来上がってるから。」


「ありがとうございます。すみません、忙しくてなかなか取りに行けなくって。」


「そんなのいいんだよ。こちらの方こそありがとう。今は年賀状出す人も、だんだん減って来てるからね。」


「そうですよね。友達とかはあけおめメ-ルやLINEで済ませちゃいますもんね。でも、この仕事に就いてから、友達とも休みが合わなくて、なかなか会えませんし、お世話になった先生や可愛がってくれた親戚とかには、やっぱりせめて年賀状くらいは差し上げたいと思って。だから今度のお休みに、頑張って書きます。」


私がそう答えると、河嶋さんは温和な笑顔で頷いてくれた。
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