Xmas eve in2020
「突然だけど。」


「はい。」


「斎藤さんは、何でこの仕事を選んだの?知ってると思うけど、流通業って、昔から不人気業種だから。立ち仕事だし、土日は休みにくいし、おまけに給料も高くはない。斎藤さんは英語はペラペラだし、他にいくらでも道があったんじゃないかと思って。」


本当に突然そんなことを聞かれて、でも過去に何度か同じ質問を受けたことがある私は


「好きなんです、人と接するのが。人とお話しするのが大好きなんです。英語だって、いろんな国の人とお話できるようになりたいから、覚えたんです。だから就職するなら接客業って決めてました。」


といつもと同じ答えをする。


「そうなんだ、すげぇなぁ。」


「全然凄くないですよ。」


照れる私に


「僕なんか、就職活動始めてからも、全然自分の就きたい仕事とか決まらなくて、結局流されるように、ウチの会社に就職して。最初の内は、立ちっぱなしで足は痛くなるし、休みが友達と合わなくて、どんどん孤独になって来るし、後悔したよ。」


と苦笑交じりに河嶋さんは言う。


「でも、やってくうちに、買い物って人を笑顔にするんだなってことに気付いてさ。」


「えっ?」


「僕の売場で言えば、大好きなおもちゃを見て、目を輝かせてた子供が、それを買ってもらって大喜びして、その姿をパパやママが嬉しそうに見つめてて。そういう姿ってなんかいいなって。そんなこと考えてるうちに、この仕事が段々と好きになってた。」


そうなんだ・・・。


「それに今年、こんなことがあってさ。緊急事態宣言とか、今まで想像もしてない事態が起こって。多くの業態が営業休止とか、テレワ-クで事務所は閉鎖とかになって・・・。でもス-パ-は営業時間の短縮はあったけど、店を閉めることはなかった。政府からも営業を続けることを要請された。その時、今更ながら思ったんだよね。命を張って、ウイルスと戦ってる医療従事者の人にはとても及ばないし、彼らのように資格がいるわけでもないけど、でも俺達の仕事って、人々の生活を支える為に、ギリギリまで踏ん張んなきゃいけない大切な仕事なんだなって。給料は残念ながら、決して高くないけど、でもそのことには誇りを持っていいんじゃないかって。」


「河嶋さん・・・。」


思わず河嶋さんを見つめていると


「なに大袈裟なこと、言ってるんだって呆れてるよね。自分でもなに、熱く語ってるんだろうって思っちゃったけど、でも僕達だって、感染のリスクに向き合いながら、毎日売場に立ってんだから。そのくらいのプライド持ってもいいかなって・・・。」


と言って、でも少し自信なさそうに視線を逸らした。


「そうですよね、私もそう思います。」


私がそう言って頷くと、河嶋さんはホッとしたように笑った。
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