Xmas eve in2020
「そろそろ乗り換えだよね。」


「はい。」


「なんか、訳の分からん話ばかりに付き合わせて、悪かったね。」


「そんなことありません。河嶋さんとこんなにお話しできたの、久しぶりだったんで、嬉しかったです。ありがとうございました。」


そう言って、私が微笑むと


「ならよかった。」


と河嶋さんと一瞬笑顔になったけど


「本当は夕飯一緒にって言いたいけど、時間も遅いし、イヴの夜に俺みたいなおっさんと一緒に食事じゃ、斎藤さんが気の毒だから。」


「えっ?」


すぐに真顔になって、そんなことを言われて、私はビックリしてしまう。


「それに、そのケ-キの消費も邪魔できないから・・・。ま、次の偶然があれば、また話をさせてよ。」


えっ、全然気の毒じゃないし、第一河嶋さんはおっさんじゃないし・・・。でもその言葉を口に出来ない私。そして、何とも言えない空気に包まれてしまう私達。


そのまま、電車を降り、黙々と歩く。やがて乗り換えの電車が違う私達は


「じゃ、河嶋さん、お疲れ様でした。失礼します。」


これでいいの?と思いながら私はそう言って、河嶋さんに頭を下げて、右と左に分かれようと歩き出すと


「あ、あの明日香ちゃん・・・。」


と遠慮がちの河嶋さんの声が。えっ?この人、私のこと今、明日香ちゃんって呼んだ・・・動揺しながら、振り向いた私に


「大晦日は出勤?」


と緊張の面持ちで尋ねる河嶋さん。


「は、はい・・・。」


ドキドキしながら、私は答えた。


「じゃよかったら・・・仕事終わったら、その・・・一緒に高城山に行かないか?」


「高城山・・・ですか?」


これまた、余りに突拍子もないお誘いに、私が戸惑っていると


「去年の大晦日、急に思いついて、仕事終わったあと、高城山にご来光を見に行ったんだ。そしたら、凄くきれいで、心が洗われるようで・・・もしよかったら、明日香ちゃんにも見せたいと思って・・・。」


そう言って、真剣なまなざしで私を見る河嶋さん。高城山は郊外にある有名なご来光スポット、それに私達の会社は元日は休業。だけど、ね・・・。


「あの、せっかくお誘いいただいたんですけど・・・感染症対策で、今度の元旦、高城山の展望スポットはクロ-ズされるって、昨日ニュ-スで見ました。」


「えっ、そうなの・・・。」


私のその言葉に、河嶋さんの顔に見る見るうちに、絶望が広がって行く。
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