Xmas eve in2020
普通の人に感覚からすれば、かなり遅い昼食を摂り終わり、私が売場に戻ると、お客様の数はかなり増えていた。時刻は午後5時をまわり、会社帰りと思われる人の姿が、グッと目立つようになってきた。


私の店の最寄り駅は、いわゆるタ-ミナル駅だから、そういう客層は、もともと多いが、今日は、夫婦や恋人同士で一緒に商品を選んでいる姿が目立つ。


きっと今夜は家族やカップルで、イヴを過ごすのだろう。


(いいなぁ。)


正直、そんな思いが胸をよぎるけど、気を取り直して


「いらっしゃいませ。」


と声を上げる。入社したての頃は、この声出しが恥ずかしくて、苦手だった。でも今は逆にその声出しも遠慮しながら、やらなくてはならない状況になってしまった。


人と接するのが好きで就いた接客業なのに、お客さんに声をお掛けするのも憚らなくてはならない。


そう言えば、今年はオリンピックの年で、外国からも多くの人々がやって来るはずだった。お店にも多くの外国人のお客さんも来られたはずで、その時は得意の英語を駆使して頑張ろうと張り切ってたのに、それもダメになってしまった。


ア〜ァ、オリンピック、ちゃんと来年は出来るのかな?感染症なんて、早く収束すればいいのに・・・。


ふと、そんなことを考えながら、私は売場で、遠慮がちに声を上げていた。


6時になると、短時間のパートさんだけでなく、松井さん達フルタイムのパートさんも、ほとんどが退勤時間となり、作業場は一気に手薄になる。


「明日香ちゃん、上がります。」


「お疲れ様でした。今日はご家族とパーティですか?」


「うん。旦那がもう、ケーキとオードブル受け取って、先に帰ってるはずだから、後はなんかちょっと作ればね。じゃ、お先に。」


そう言って、松井さんは作業場を後にする。松井さんのお子さんは、もう高校生と中学生なんだけど、クリスマスは家族と過ごしたいとまっすぐ帰って来るそうで、旦那さんも今日は残業なし。幸せそのもののご家族、いいクリスマスイヴを。


お店は7時過ぎまでがピークタイムだけど、今日はもう少し後ろに延びそう。


売場のボリュームは、まだまだ落とせないけど、明日まで持ち越せる商品ではないから、もうイケイケドンドンで作りまくる時間帯ではない。


数字と予測の両睨み。


「隼人、寿司は助六系と巻物は、ワンマークダウン(値下げ)。明日香は、ローストチキンはもういいけど、普通の唐揚げはもうちょっと揚げないと足りないんじゃないか。」


吉田マネージャーからの指示に


「わかりました。」


私達は頷いて、動き出した。
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