Xmas eve in2020
私が店を出たのは、閉店から約30分後の10時半過ぎ。


(あ〜ぁ。これ、どうしよう・・・。)


そう心の中でつぶやいた私の手にはクリスマスケーキ、それもしっかりワンホールの大きさのものが。


クリスマスケーキ担当部門の社員としては、買わないわけにはいかないんだけど、でも、就職を機に、一人暮らしとなった私には、正直処置に困る。


スイーツは嫌いではないけど、さすがに、まるごと一個は食べ切れない。実家に持って帰りたくても、もう電車もないし、結局去年は3日かけて、なんとか食べ切った。


それにイヴの夜、それも夜中近くに、一人黙々とケーキを食べていると、否が応でもクリぼっちの現実が突きつけられ、やるせなくなってしまう。


(松井さんも隼人さんもマネージャーも、みんな嬉しそうに帰って行った。それに引き換え、私は・・・。)


香川くんにからかわれても、何も言い返せず


(結局、今年も夕飯代わりに、一人ケーキをパクつくしかないんだよね。)


思わずため息をつきながら、通用口を出た私は、次の瞬間


「わぁ・・・。」


と感嘆の声を上げていた。


最寄り駅から、徒歩で約5分程の距離にある我が店。店から駅に続く道の両脇には、木々が連なり、この時期には、綺麗なライトアップが施される。


それはなかなかの光景で、去年はその美しい風景に癒やされながら、家路についていた。


ところが今年は、感染症の再拡大の状況を鑑み、密の発生を避ける為に、例年11時まで実施されているライトアップが9時までに、短縮となり、私の退勤時間には消灯されてしまっていたのだ。


なんとも無粋なことを、とは思ったがしかし、このご時世、仕方ないよなぁとも思っていた。


それが今日は点灯されていた。手違いなのか、それともイヴくらいは、ということなのか?後者だとしたら、それじゃ自粛の意味なくない?と思ってしまうが、それこそ無粋かと思い直し、しばしその美しさに見惚れていた。


「やっぱり綺麗だね。」


すると後ろから、そんな声が掛かり、振り返ると


「河嶋さん。」


玩具、文房具などを取り扱うカルチャー部門のマネージャー、河嶋優貴(かわしまゆうき)さんの姿があった。


「あっ、お疲れ様でした。」


私が、挨拶すると


「斎藤さんもお疲れ様。」


河嶋さんも笑顔で、そう返してくれると、私の横に並んだ。
< 8 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop