Xmas eve in2020
「売れてたね、今日。売上昨年比、楽々クリアしてたじゃない?」


「はい、ありがとうございます。でも、その分、廃棄ロスも出ちゃって。」


「それは仕方ないよ。ある程度、攻めた結果だから。」


そう言ってくれる河嶋さんが横にいるという、このシチュエーションに、私は結構ドキドキしてる。


河嶋さんは私より5つ年上の29歳、独身。昨年、私が入店する直前の人事異動で、ウチの店に赴任して来た。


なんで、こんなに詳しいかと言うと、ウチの会社では、新入社員は正式配属の前の試用期間中に、他部門で1ヶ月間、実習を経験することになっていて、私はカルチャーでそれを受けた。河嶋さんは、初対面の時、いろいろと自己紹介してくれたのだ。


名前の通り、河嶋さんは優しく、穏やかな人で、懇切丁寧に私を指導してくれた。


実習が終わる時には、食事に誘ってくれて


「僕はマネージャーになったばかりで、自分もまだあたふたしてて、キチンと斎藤さんの面倒を見てあげられなかった。本当にごめんな。今度、君が付く吉田さんは、前にも1度一緒にやったことがあるから、よく知ってる。厳しいけど、面倒見のいい人だから、付いて行って間違いないから。それに斎藤さんの明るさとひたむきさは、接客業にピッタリだと思うから、自信を持って、やって行けばいいよ。なんか困ったことがあったら、僕で良ければ、いつでも相談に乗るから、頑張ってな。」


なんて言ってくれて、本当に嬉しかった。以来、私は河嶋さんに、淡い想いを抱いているんだけど、フロアが違うとなかなか会わないし、勤務時間もお休みも合わなくて、その想いを伝えるチャンスも勇気もないままになってしまっている。


「でもカルチャ-さんも今日は、忙しかったんじゃないですか?」


なんと言っても、今日はイヴ。ウチのマネージャーじゃないけど、お子さんにクリスマスプレゼントを買うお客さんが多かったはずだ。


「うん。特に会社帰りのお父さんが、夕方から結構ね。吉田さんも娘さんのプレゼントに、着せ替え人形買ってってくれたよ。」


「今日は帰って、サンタをやるって、張り切ってました。」


「そうか。娘さん、確か幼稚園に上がったばかりだったかな。吉田さんデレデレだからなぁ。」


「はい。この世で、娘より可愛い生き物はいないって、よく言ってますから。」


「ハハハ、それ僕も聞いたことあるよ。」


まさに親バカそのもののマネ-ジャ-を思い出して、2人して笑ってしまった。
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