LOVE and DAYS…瞬きのように
「……わかりました」
低い声でつぶやいて、あたしは黙りこむ。
昨日ミサキの姿を見たときから、想像はついていたこと。
だから心の準備はできていたはずなのに。
悔しい……。
たまらなく悔しくて、吐き気すらこみ上げる。
こんな汚い手を使って、あたしと健吾を引き離して。
それでミサキは満足なんだろうか。
今頃、笑っているんだろうか。
こんなことのために、あたしは健吾を失ったの……?
瞳の奥が熱くなったけれど、涙は出なかった。
代わりにあたしを埋め尽くしていたのは
初めて経験するような激しい怒り。
「……話してくれて、ありがとうございました」
心とは裏腹に、あたしの声は静かだった。
すっと立ち上がり、あたしは歩き出す。
「ちょっと、莉子ちゃん、どこに……」
シンさんが席を立つ音が、背後で響いた。
それを振り切るように、あたしは走りだした。
「莉子……っ!」
アキの声も、今のあたしにはもう届かない。
店を飛び出すと、太陽はすでに真上に昇りかけていた。
清らかな光を浴びて一瞬だけ足がすくむ。
だけど、それ以上のどす黒い怒りに突き動かされ
あたしは再び走り出した。