クールな彼の甘苦い罠
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やっぱり 席が離れると話す機会はなくなり
席替えから5日経った今日は土曜日。
「 今日 菜桜ちゃんが見にくると思ったら
夜寝れなかったんだけど 」
って 試合前のアップが終わり、
稜矢が俺の肩に腕を回してくる。
「 ミスしたら許さねーよ 」
「 まかせろー!!」
俺も稜矢もたった5人のスタメンに選ばれていて
昔から同じチームでプレイしてる俺たちはそれなりにいいコンビでもある、
体育館へと向かいながら作戦を練っていると
「 稜矢くーん!」
って 足立の声がして俺らは振り向く
もちろんそこには松木もいて、少し安心した。
この前、あんな態度を取ってしまったのに
「 頑張って 」
って 今の俺には贅沢すぎる言葉をもらう。
「 遥野ちゃん、紫月に惚れちゃうかもよ〜? 」
なんて、上機嫌の稜矢が変なこと言い、
「 私が惚れちゃうくらい頑張ってね? 」
って 拳を俺の前に出すから
「 がんばる 」
俺は松木の小さな拳に、自分の拳を合わせた。
平気なフリを見せるけど
内心は嬉し過ぎてたまらない。
今日は試合終わりに松木を誘おうと思っているから。
だけど 今は試合に集中しないといけない時間で、
稜矢と体育館へ向かった。