クールな彼の甘苦い罠




**


やっぱり 席が離れると話す機会はなくなり
席替えから5日経った今日は土曜日。



「 今日 菜桜ちゃんが見にくると思ったら
 夜寝れなかったんだけど 」


って 試合前のアップが終わり、
稜矢が俺の肩に腕を回してくる。


「 ミスしたら許さねーよ 」

「 まかせろー!!」

俺も稜矢もたった5人のスタメンに選ばれていて
昔から同じチームでプレイしてる俺たちはそれなりにいいコンビでもある、



体育館へと向かいながら作戦を練っていると

「 稜矢くーん!」


って 足立の声がして俺らは振り向く

もちろんそこには松木もいて、少し安心した。


この前、あんな態度を取ってしまったのに


「 頑張って 」

って 今の俺には贅沢すぎる言葉をもらう。


「 遥野ちゃん、紫月に惚れちゃうかもよ〜? 」

なんて、上機嫌の稜矢が変なこと言い、

「 私が惚れちゃうくらい頑張ってね? 」


って 拳を俺の前に出すから

「 がんばる 」

俺は松木の小さな拳に、自分の拳を合わせた。

平気なフリを見せるけど
内心は嬉し過ぎてたまらない。


今日は試合終わりに松木を誘おうと思っているから。


だけど 今は試合に集中しないといけない時間で、
稜矢と体育館へ向かった。





< 49 / 92 >

この作品をシェア

pagetop