翡翠の森
「いきなり、坊っちゃんとアルフレッド様が現れて。意味不明な言葉を残して去って行ったと思ったら、本当に女の子を拐って来るんだから」
「ちゃんと説明したじゃない」
「説明ったってね。“じゃ、僕、お嫁さん拐ってくるね”……なーんて、誰が信じるのさ」
「でも、しっかり準備してくれてた。さすが、ハナ」
二人のやりとりに、笑みがこぼれる。
(この二人も親子みたい)
「アルバート様、まさかこんなところに……」
「泊まるよ、もちろん」
「こんなところで悪かったね。文句がある奴は出ていきな」
体も態度も大きい兵にも物怖じすることのないハナに、ジェイダは彼女が好きになった。
「さ、疲れただろう。女の子は早く部屋に。男どもは後だよ! 」
「えー。僕も……」
「どうせ、同室でも手なんか出せやしないだろ」
ブハッと吹き出す音が聞こえ、ジェイダはジンを睨み付けた。
笑いが止まらないジンを更にジトッと見上げながら、用意してもらった部屋へ向かう。
「いい部屋ね」
ジンと二人だからか、前回よりも広い。
けれども素朴さは変わらず、ふっと肩の力が抜けるようだ。
「いつものお部屋も、もったいないくらい豪華で可愛いけど。こういうのも、ほっとする」
ベッドに座れば、木の温もりと洗濯の匂い。
(何て言うか……お母さん、って感じ? )
ジェイダに母の記憶はない。
物心ついた時には、血の繋がりはないが仲のいい兄弟に囲まれていた。
(どうしても、ちょっとだけ羨ましいかな)