翡翠の森
最初に向かったのは、孤児院だった。
歩き慣れた場所だというのに、ロイの手に掴まって足を踏み出す。
レジーとも何か話さなくてはと思うのだが、話題が見つからぬまま。
「レジーは来たことあるの? 」
気を遣ったのか、ロイが話しかけた。
「……ああ。何度かな」
どうして、中に入ってくれなかったのだろう。
兄だと名乗ってくれなかった?
「割と楽しそうにしてたからな。裕福とは言えないが、それでもあの頃の俺と暮らすよりは……遥かにマシだった」
「戻ってくるのは、辛い記憶だけじゃない。両親のことも……兄さんのことも、もっと知りたいと思う」
上手く呼べただろうか。
反応が気になったが、とてもレジーを直視できず。
「そうだよ。辛い事実は、消えはしないけど……これから楽しい思い出を、増やしていくことはできる」
ロイを窺うと、よくできましたというように頭を撫でてくれた。
「それに、僕も子供の頃のジェイダが知りたいし。どんなだった? 」
「……言わなくていいから! 」
思い出す素振りをした後、レジーがにっと笑う。
「そうだな……そういや、ロイに会わせると言った時、全然興味なさそうだった」
「えー。でも、その頃会ってたとしても、恋に落ちたと思うけどな」
「ま、そう思ってた方が都合いいよな」
わあわあと騒ぎながら歩くうち、いつの間にかジェイダの足取りも軽くなっていた。