悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
“あの獣”という呼び方に違和感を覚える。まるで、周囲から拒絶されている存在を指している言い方だ。
きっと、彼にごまかしは見抜かれる。嘘偽りなく、本心を話そう。
「怖くはありません。鋭い爪と牙があって、威嚇されると震え上がりそうになりますけど、ラヴィスはちゃんと話を聞いてくれました。それに、仲良くなったんです」
「仲良く?」
「はい。陛下がしつけていらっしゃるからかもしれませんが、ラヴィスはとてもおりこうさんです。頭を撫でても抱きついてもじっとしてくれて優しいし、わんちゃんと呼んだら不機嫌そうで、なんだか可愛くて」
私の返答に黄金の瞳が見開かれた。数回まばたきをした後、無表情だった彼が「ふっ」と口角を上げる。
それは一瞬であったが、あの高圧的で冷酷な獣と名高い彼の笑みを知る者はこの世には他にいないだろう。
「あ、あの。私、なにか変でしたか?」
「愚か者。つくづく怖いもの知らずのおかしなやつだと呆れただけだ」