追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
予想外の出来事を前に声もなく立ち尽くしていると、坂の下から大きな怒鳴り声が響いた。先ほどの破落戸たちだ。

隣にいるシリルは、いつの間にか耳を引っ込めている。

「見つけたぞ! もう逃げられると思うな!! 今度こそ捕まえて売り飛ばしてやる!!」

破落戸が叫んだ瞬間、隣からブワリと恐ろしい殺気が立ち上った。

「……っ!? シリル!?」

「売り飛ばす? 売り飛ばすって、エマのこと?」

シリルの体が私から離れ、ゆらりと揺れる。次の瞬間、こちらに走ってきた破落戸の悲鳴が響いた。

「へぶうっ!!」

「ぐはああぁっ!!」

「うおぉぉぉぉぉぉっ!?」

何かに吹っ飛ばされて坂道を転がり落ちていく破落戸たち。たぶん、シリルの魔法にやられたのだと思うが、同情はしない。

「僕とエマの再会の邪魔なんだよ」

冷たく言い放ったシリルは、打って変わって柔らかい笑みを浮かべ私を見る。

「さあエマ、早く家へ帰ろう」

「あの、家って?」

「モフィーニアの魔王城に決まっているでしょう? それとも、他に行きたい場所があるの?」

「ないよ。でも、魔王城ということは、シリルはあのあと……」

――異世界人との戦いで、フレディオと私が命を失ったあと、どうなったの?

――魔王を引き継いでくれた?

聞きたいけれど怖い。私とフレディオは、まだ幼いシリルに全ての重責を押しつけてしまった。
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