追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「あのあと? あのあとって、君がいなくなってからのこと?」

再び私を抱きしめたシリルは、少し低くなった声で言った。

「もちろん、魔王になったよ。父上も君も、それを望んでいたからね。今も魔王……百年くらい、ずっと」

「百年!? あれから、百年も経ったのですか?」

前世では年号なんて知らないまま、キーランを追放された。

モフィーニアとキーランの年号は共通ではない。だから、私は今がいつなのかいまいちわかっていなかった。

「そういえば、魔族は長生きするのでしたね。私と出会ったときのシリルは十歳を少し過ぎた辺りだったのに。今は私より年上に見えます」

今世の私は十七歳になったばかりだけれど、シリルは二十歳前後の姿だ。何もかも、すっかり追い抜かれた。

「僕はエマより大人になれて嬉しいよ。ずっと、年の差がもどかしかったから。さて、君のステータスに風魔法が増えているけれど……空は飛べる?」

「飛べますが、方向がいまいち定まりません。記憶が戻ったのが少し前で、それまでは、スキルが使えないどころかステータス自体も見えませんでしたから」

「なるほど、そういうこと。連絡をくれないなんて、水くさいなあと思っていたんだ。あとで詳しい話を聞かせて」

言い置くとシリルは私を抱え、スラム街のてっぺんから眼下の街をめがけて飛び降りる。

「ひゃあっ!」

風魔法で落ちることはなかったが、急な浮遊が怖くて、私はシリルにしがみついた。

「うわあっ!?」

なぜか、シリルまで真っ赤な顔で声を上げる。

「ごめんなさい。驚かせてしまいましたか?」

「ち、違うよ? むしろ、ご褒美というか、なんというか」

要領を得ない回答を繰り返すシリルは、赤い顔のままキーランを出て、ものすごいスピードでモフィーニアへと飛び続けた。早すぎる空の移動は、ちょっと苦手だ。
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