翠玉の監察医 アイネクライネ
「俺の負けか……」

アーサーは自身を拘束する手錠と蘭を見つめ、悔しげにする。

「警察が来たら少しは警戒が緩むかと思ってたんだけど」

「そのようなことは消してありません。どんなに有利な戦況になっても周りには気を配れ、そう教わりましたから」

凛とした声で答える蘭を、息を飲んで圭介や警官たちが見つめている。まるで時間そのものが止まってしまったかのように、周りはみんなこの戦乙女に心を奪われてしまっていた。

「またどこかで会えたら戦おうぜ。次は負けない」

そう言うアーサーに蘭は、「生きているうちにお会いすることはもうないでしょう」とすぐに返す。そしてくるりと背を向けた。

「私たちが次に会うとすれば地獄です」

アーサーの狂ったような笑い声に見送られ、蘭と圭介は体育館を後にした。






< 33 / 41 >

この作品をシェア

pagetop