翠玉の監察医 アイネクライネ
蘭と圭介は、星夜が目覚めるのを待つことにした。許可は警察官が取ってくれたので問題はない。

蘭は圭介に時々、星夜との思い出話をしながら涙をこぼした。圭介はそれを頷きながら聞き、「この人には敵わないんだなぁ」と何度も呟く。

「let it be let it be let it be let it be……」

圭介が眠ってしまった後、蘭は星夜に教えてもらった思い出の曲を歌う。この歌は蘭にとって特別な歌だ。何度も何度も歌う。

静かな夜に、美しい歌声が響いた。



太陽が登り、アメリカに朝が訪れた。蘭は一睡もせずに歌い続けていたのだが、星夜はまだその目を開けていない。

「まだ目覚めてないですね」

圭介はそう言った後、朝ご飯を何か買ってきますと言い病室を出て行った。それを見送った後、蘭はまた歌い出す。

「………懐かしい歌、だね……」

歌の途中で、小さな声が聞こえた。それはずっと聞きたかったあの声だった。
< 36 / 41 >

この作品をシェア

pagetop