翠玉の監察医 アイネクライネ
「今日も仕事やっと終わりましたね〜!お疲れ様です!」

世界法医学研究所を出てホテルへと向かう途中、圭介がニコリと蘭に微笑んだ。この笑顔を見るのも明日で最後になるかもしれない。そう思うと、蘭の胸がギュッと痛くなっていく。

しかし、圭介に話せば圭介も付いてきてしまうだろう。それだけはあってはならない。危険な目に遭うのは、命を賭けるのは、自分だけでいいのだ。

「深森さん、お疲れ様です。明日も仕事ですし早めに休みましょう」

蘭が微笑むと、圭介の頬が赤く染まっていく。蘭はもう考えることをやめ、ただ星夜がこれから先も生きていってほしいという思いだけを心の中に宿す。

もう泣かない。そう蘭は決めたのだ。



次の日、蘭はいつも通りに仕事をし、圭介と共にホテルへと向かう。今日がアーサーに指定された日だ。今からそこへ向かわなければならない。

「深森さん」

蘭はかばんの中から薬を取り出した。今から睡眠薬を飲んでもらって追って来れないようにするつもりだ。
< 6 / 41 >

この作品をシェア

pagetop