獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「マクシミリアン皇帝陛下、貴国の手厚い歓待に驚いております。今日という日は、きっと両国にとって歴史的な一日になるでしょう」
 ガブリエルもそつなく感謝の意を示し、俺たちは手と手を取って熱く握手を交わす。
 そうして互いの距離が縮まったところで、周囲に聞こえぬよう飾らぬ言葉で小さく囁き合う。
「マクシミリアン、久しいな」
「ガブリエル、お前も元気そうでなによりだ」
「積もる話もある。後で一杯どうだ?」
 この後は、大広間でガブリエルを歓迎する晩餐会が予定されている。豪華な料理の他に美酒も多く揃えているが、彼の言う「後で一杯」はもちろんそれではない。
「部屋にとっときの酒を用意してある」
「ハッ、準備がいいじゃねえか」
 俺の答えにガブリエルが日に焼けた肌に白い歯を光らせる。
「堅苦しい晩餐会の席では、耳ざわりのいい上っ面の話しかできんからな」
「言えてら」
 夜の再会を目と目で確認し合い、握手を解いた。
 ガブリエルは、交渉相手と考えると決して生易しい人物ではなかったし、これから三日間に及ぶ国交正常化交渉では難航が予想された。
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