獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「もちろん覚えている。当然、ヴィットティール帝国民の身体能力についても承知している。なにより共に諸国を巡っていた時分、お前の異能を嫌という程見せ付けられているからな。路銀が足りなくなり参加した夜間工事では、お前はランプも支給されぬうちからひとり掘削作業を進め周囲の度肝を抜いた。農家の収穫作業では、カマを手に目にも留まらぬ速さで刈り取りを熟し、他の者が半分も終わらぬ内に自分の作業を終えた」
 私は、ガブリエル様が口にした台詞に大きな驚きを覚えていた。
 夜目が利いたり、俊敏性が高かったり、ガブリエル様が挙げたのはどれも代表的な獣人の特性だ。とはいえ、現代にあってここまで卓越した能力を持っている帝国民が果たしてどれだけいるだろう。
 ……やはり、マクシミリアン様はとても得難い人だ。
 それは単に持って生まれた能力という意味だけでなく、朝市で聞かされた農業支援を始めとする政治手腕にしてもそうだ。
 マクシミリアン様を見上げる目に、自ずと熱が篭もった。
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