ささやきはピーカンにこだまして
「――これ。なんで前後、空き時間なの? 食事は3時間目が終わったあとにして。昼休みは即、行動できるくらいにしないと。こんなもったいない時間の使いかた、しちゃだめだよ」
「ほんとに? …あのね、ぼくもそうしたいと思って――――ぁ」
「…………」
 いいよ。
「ごめんなさい」
「…いいよ、もう」
 なんだか、ばからしくなってきた。
 わたしがどんなに一所懸命に2年生と1年生のあいだの線を引こうとしても、きみはさらっ…さらっ…っと、その線を消してしまう。
 でも、その線がこんなに簡単に消えちゃうのは、もしかして、本当は、わたしがちゃんと《先輩》してないのかも。
「ぁー、でもね、わたしもこれで女子なので……、練習後にもう5分くれない? ちょっと時間かかると思う、きみより着替えるのが」
「――あ。ごめん。ぼく、考えなしで」
「…………」
 だからぁ。
 ごめんなさい、でしょ?
 もう、ツッコまないけどね。
「えと、あとかたづけは、ぼくがひとりでするし。――あとは? あと、その…、男女のちがいとかはその……」
 うわ。
 なに赤くなってるのよ。
 いいです!
「そこ…まで、気にしなくていいっ」
「――そう」
 んもう。
 あからさまにホッとした顔するんじゃない。
 笑うから。
「じゃ、実取。明日からがんばろう」
「なんで笑うんだよう」
 あ。気づいた?
 なんでだろねぇ。
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