ささやきはピーカンにこだまして
「一所懸命?」
 まずい。
 美香キャプテンの目が糸みたいに細くなった。
「八木。あんたの一所懸命は、結果はどうでもいいってこと? 結果を出せない一所懸命になんの意味がある? 一所懸命に走りました。でもシャトルには届きませんでした。点を取られました。負けました」
「…………」
 くそ。正論だ。
 おまけに、この圧力。
「負けた時点で、あんたの一所懸命は、相手の一所懸命に及ばなかったってことでしょ。もっと一所懸命な子がいるってことでしょ。あんたは、それでいいの?」
「……っ……」
 い…い、わけ、あるか――っ!
「わかりました」
 まずい、まずい、まずい。
 みんなの目がわたしに全集中。
八木(やぎ)ぃ……」
 小松の震える声が決定打。
「わたしたちが――。わたしと小松が、だらしなかったんです」
「や…ぎぃ……」
 泣くな、小松。
 いいんだって。
 わたしたち、友だちじゃん。
 桃子が立ち上がる。
「一路はじゃんけんに負けただけじゃん。悪くないよ。ちゃんと女子部員は集めてくれたじゃない」
「そうだぞ、八木。おまえまで気にするな」
 ありがとう、桃子、結城先輩。
 でも美香キャプテンに――結城先輩のカノジョに――、結城先輩のまえでここまで言われて――…。
「小松! めそめそするの、やめな。わたしがなんとかする!」
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