ささやきはピーカンにこだまして
「おいおい。おどすのはやめろって言っただろ、美香。ここは八木の好意にすがるってことで。……頼むぞ、八木(やぎ)。1年でも、2年でもいいんだ。男バドのために、真面目なやつを」
 そんな目で見つめられたら……。
「はい。先輩」
 なんとかするしか、ない…よねえ、八木 一路(いちろ)
 ふう。
 なんか、とんでもないことになっちゃったぁ。


 3年生が帰ったあと、1年生にネットのしまいかたや、アリーナの掃除のしかたを教えるついでに、つい先頭にたってなんでもやっちゃうわたし。
「センパーイ、もう見ててくださっていいですよう」
「いやー。なんか教えるの…むいてないんだよねえ。――令子ちゃんも、わたしにはあまり先輩を期待しないでね」
「うわぁ。名前で呼んでもらえるんですかぁ」
 (ははは…)
 …というより、実は漢字がむずかしくて桃子ですら読めなくて。
 二紀(にき)の知り合いみたいだから、あとで聞こうと思いつつ、えい、名前で呼んじゃえばいいじゃん…という。
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