ささやきはピーカンにこだまして
 そっとドアを開くと
「なによ。勉強のじゃましないでよ」
 もっともイヤミなセリフが返ってきた。
 わたしも一度くらい言ってみたいもんだわ。
二紀(にき)ぃ」
「…………」
 返事なし。
 いつからこんなに態度がでかくなったんだ。
 これだから年子の弟なんて、いらないわって思うのよ。
 いくら結婚がおそくて早く子どもがほしかったからって、よりによってかわいいわたしが生まれて1年もしないうちに、こんな生意気なボーズを生まなくたっていいじゃないのよ、母さんのばかっ。
「二紀ちゃーん」
「却下」
 むっ。
「まだ、なんにも言ってないですけど」
「言わなくてもわかりますぅ」
 振り向きもしない。
 あっそう。
 だったら話が早い。
「ねぇ。だれか、まだ部活決めてない子、紹介してよ」
「ぼくに奴隷を紹介しろって?」
 首から上だけ振り向いた二紀の顔に浮かんでいたのは、あきらかな軽蔑。
 く…や、しぃぃぃぃ。
「ぼくは確信したね。なに、あの野球部とか。付属の中等部なんて、犬かなんかだと思ってるんでしょ、あなたたちは」
「…………」
 それは否めない。
 けど、それ、わたしの話とちがうじゃん。
< 32 / 200 >

この作品をシェア

pagetop