ささやきはピーカンにこだまして
 廊下に令子ちゃんたちが集まっている。
 はやくお昼ご飯を食べなさいって送りだしたのに。
 一斉に頭を下げられて、結城先輩がすっと右手をあげて返礼。
 カッコイイひとはなにをしてもカッコイイよね。
 カッコ悪いのは、ここからのわたしだけ。
「で。どこに行くの、八木(やぎ)
「――ああ、はい。えと、このクラス――…」
 わたしが指さすと、令子ちゃんが教室のなかにタタタッと走っていった。
 呼び出してくれるらしい。
 助かる。


「えと、うちの弟……。二紀(にき)といいます」
「…………」結城先輩が唇に拳を当てる。
「弟くん! わかる。そっくりだね」
「…………」「…………」
 姉弟(きょうだい)、そろって苦笑ってか。
「二紀、こちら男バドの結城先輩」
「――――っす」
 なにそれ、ちゃんと挨拶してよ! …は心の中で。
 なにしろ廊下が気味悪いくらい静かになってしまった。

 あきらかに上級生のイケてるメンズ、結城先輩。
 年上キラーで有名な、八木 二紀。
 わたしだって他人事なら、事件の影に女アリ? と興味津々なご対面だ。

 気づまりな沈黙を破ったのは、おとなな結城先輩。
「ごめんな。迷惑かけたんだろ。さわがせて悪かったな、ニキくん。それだけちゃんと伝えに来た」
「すみません、結城さん」
 よし。

 先輩かわいそう。
 先輩かわいそう。
 先輩かわいそう。

 さぁ、出てこい、涙。

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