ささやきはピーカンにこだまして
 このごろ、部活で年上女子にちやほやされるもんで、髪のセットに倍くらい時間をかけちゃって。
 じゃまなんだよ。
 おまけに結城先輩のことまで……。
 いったい実取(みどり)のやつ、二紀(にき)になにを吹きこんだのよ。
「ちょっと姉ちゃん、ぼくだってスプレーしないと! 1分で終わってよ」
「まさか! あんたは遅刻しな」
「ママー!」
「…んもう。毎日なんだから、あなたもちょっとは学習しなさい、二紀。一路(いちろ)も。お姉ちゃんなんだから、もうちょっとなんとかならないの?」
「二紀が中等部のときみたいに早起きすれば、なーんにも問題ないじゃん」
「なんだよ。そんなの横暴だ」
「うるさーい!」母さんがついにキレちゃった。
「二紀は早く牛乳飲んで。一路はさっさとトイレでもどこでも行きなさい!」
「はーい」「はーい」
 あー、くやしい。
「結城先輩と昼トレ?」
 実取のやつぅ。


 お昼休み。
 食堂でランチ組の桃子たちにくっついて、お弁当持参のわたしも食堂へ。
 教室にもどる途中、廊下で全身真っ赤な実取とばったり。
 ……なんて派手なスウェットだ。
 自分が強いと思ってるひとって、平然と派手なウエアを着るよね。
 それ、ジュニアチャンプの俺様仕様じゃん。
 むかつくぅ。
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