ささやきはピーカンにこだまして
 バスが学校について。
 遅刻すれすれの荒ぶるダルマ軍団に押されてバスのタラップを降りちゃったから、そのひととは、それっきり。
 渡したままになった、わたしのハンカチ。
 真っ青なピーカン空に白い雲。
 夏休みに湘南の合宿所そばの雑貨屋さんで、見つけたとたんに気にいってレジに持っていってしまったハンカチ。

 今でも。
 晴れた日にはあのハンカチと、そして彼を…思い出すけど。
 もう一度会っても、きっとわたしには彼がわからない。
 ……でもきっと。
 これから好きになるひとには、彼の…陽にやけた細い指と、さらさらの黒い髪を、わたしは探してしまうだろう。

 《天使の輪っか》だけの、わたしのアナタ。
 わたしの初めてのトキメキ。
 見た目だけに心を奪われてしまうなんて。
 恥ずかしい。
 幼稚な。
 まぬけな――初恋。

 4月。
 わたしは高校2年生に、なる。



*******
筆者(注
思っていたより読者のかたの年齢層が高かったので、中1想定で使っていた漢字と振っていたルビを今作から高2レベルに上げます。
「はぁ…、らくちん」(笑)
< 6 / 200 >

この作品をシェア

pagetop