ささやきはピーカンにこだまして
 振り返れば、ここで会ったが百年目。
 こいつもやる気満々、ネットより店頭のほうが早いって、わざわざ買いに出向いて選んできた白のスウェット上下の、二紀(にき)
「あ! やっぱり姉ちゃんだ。声がすると思ったんだよぉ。なにしてんの、こんなとこで。だれもいないからって汚い言葉使わないでよ、恥ずかしい」
「…………」
「そだ、姉ちゃん。まーじ、ちょうどよかった、今日さぁ…」
 こんなときに、のこのこ登場するあんたが悪いのよ。
 回し蹴りっ!
「いってぇぇぇぇ! いきなりなにすんだよ。ぼくがなにしたよぉ」
 クリーンヒットしたおしりを押さえて跳ねまわる二紀の涙目に、ちょっとすっきり。
「姉ちゃん! ぼくだって、いいかげん怒るよ、んもう」
 なによ。やる気?
 ファイティングポーズを取ったら、突然の笑い声。
「ははは。なんだ? こんなところで姉弟(きょうだい)げんかか、八木(やぎ)
 きゃー。
 結城先輩!
 音もなく突然、現れないでくださいよぅ。
 ひゅん ひゅん ひゅん
 廊下でラケットを素振りなんて、ごきげんですね、先輩。
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