ささやきはピーカンにこだまして

「ちょうどいいや。八木(やぎ)も来て、ノック手伝ってくれよ。これからアリーナ行くから。そういえば実取(みどり)はどうした? 二紀(にき)
「先、行きましたけど」
 ちぇっ。
 いいなぁ、二紀のやつ。
 先輩は結局、二紀のほうを名前で呼ぶことにしたんだな。
 あー、だめだめ。
 そんなことを考えちゃ……美香キャプテンに悪いよ、ね。
「そうか。じゃ、おれたちもいそごうか。――八木?」
「はぁ……」
「なんだ、昼飯まだか?」
「いえ…そうじゃないですけど――…」
 先輩に頼まれたらわたし、断れるわけない。
 でもアリーナには、先に走っていった実取も…いるはず。
 はぁ…。


 部室からシューズを取ってきたので、ひとり遅れて着いたわたしは、さっき実取に忙しいと言った手前、アリーナのドアにかけた手が、ちょっと硬直。
 思いきってドアを開けると、よりによって実取に一番先に声をかけられた。
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