ささやきはピーカンにこだまして
第9章『切れぎれボーダーライン』
「じゃ、中間試験のあとの土、日のスケジュールはいま言ったとおり。ブロック予選に向けて、3年は悔いのないように。自主練習…今年はどこに行くんだい? 美香」
「下井草のアリーナが予約できてます」
「男子は? 結城」
「今年も武蔵野一高と合同練習を組みました」
 明日から1週間、対外的には試験前の部活休み。
 でも試験後に大会がひかえている部は外部施設で練習をする。
 バド部も登録選手はお休み返上だと知った二紀(にき)は『体育会系がライバルにならない理由、初めて理解したわ』とげんなりしていたけど。
 事前に知らされていたせいで、昨夜(ゆうべ)は一高のホームページの選手写真をわたしに見せて笑い転げていた。
 つくづく失礼なやつ。

 あれから――結城先輩のラスト個人戦の日から――、めちゃくちゃ(じゅん)の存在が重荷になっているわたしには、これからしばらく準と会わずにいられる毎日が、ちょっぴり後ろめたく、待ち遠しい。
 わたしたちは男と女で。
 1年生と2年生で。
 特別無理をしなくても、あいつを無視するのなんか簡単なはずなのに。
 ほら、今も――…。
 あいつはしっかりわたしの視界に入ってくる。
 うつむいて……。
 横顔に影を落とす前髪が、さらっ……、さらっ……。
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