ささやきはピーカンにこだまして
「それじゃシメは、美香? 結城?」
 益子先生の声はあきらかに、かかあ天下なふたりをからかっているけど。
 美香キャプテンは、そんなのどこ吹く風だ。
 にっこり笑って結城先輩にどうぞのポーズ。
「はは。譲られちゃったな。(だん)バドは秋まで各自がやれることをやるしかないけど、(じょ)バドはたとえ短期間でもここでさらに力をつけて、上を目指してくれ。…じゃ、まずはテストがんばろう。解散」
「ありがとうございましたぁ」
 総勢30人がいっせいにあいさつすると、アリーナに熱気がこもる。
 (じゅん)二紀(にき)が体育の授業で見せたパフォーマンスの効果は抜群で、4月の遅れをものともせずに、いまや男バドも10人になって、結城先輩は堂々のキャプテンだ。

「おーい、ヤギ」
 桃子たちとアリーナの出口に向けて歩き出すと、わたしだけ呼び止められた。
「はい?」
 この八木(やぎ)の「ぎ」が下がって山羊になる呼びかた。真澄先輩だ。
 立ち止まったわたしに元気に手を振るやつら。
「じゃね、メーメ」「おっ先」「ばいばーい」
 なにそれ。不吉。
「ヤギ。おまえ昼休み、ヒマだよな」
「とんでもない!」
 予感的中。
 昼休みっていえば、団体戦に登録されている二紀たちは、それを真に受けて出場する気満々で昼トレを続けてるんだから。
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