声と性癖
でも、褒められて嬉しそうだったので、ご褒美下さい、と言ってみた。
「なんですか、それ。」
結衣がくすくす笑っている。

「耳を貸して?」
少しだけ迷った様子はあったけれど、結衣は素直に首を傾げた。

ちょっと、距離を縮めたい。
けれどそれだけではなくて、いちばんは聞いてみたいのだ。

結衣のその声で、自分の名前を呼んで欲しい。

「名前で、呼んで?」
結衣の身体が、ぴくっと揺れる。

蓮根の呼んでほしい、に少なからず官能の匂いを感じ取ったのかもしれない。

声フェチの蓮根に、人の声を聞くプロフェッショナルである結衣。

気付いたかもな、とは思ったけれど、無邪気を装って、ん?と結衣に向かって首を傾げて見せる。

結衣はとても戸惑っているし、それが越えてもいいラインなのかどうか、非常に慎重に判断している様子だ。

その警戒心は正しい。
けれど、蓮根は結衣が優しいことも知っている。

「涼真って、言って?」
蓮根にとってはそれだけでも前戯のようなものだ。
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