声と性癖
「なんも、してない……ですよ?」
「彼に、しどけなくもたれかかっていた結衣さんを見て、背中がひやっとしました。結衣さん、僕はそんな風に思うことはないんですよ。」

しどけなくって……。
それに、とても、とても丁寧な涼真の言葉遣いがすごく怖い。

「誰にも結衣さんを渡したくない。結衣さんに他の男を見て欲しくない。あなたは僕だけ見ていればいいって、思うことすらあるんです。」

「涼真……さん……」
なぜ、この人はこんなに熱いの……。

涼真はソファに座っている結衣を両腕に閉じ込めて、真っ直ぐな瞳を向けてくる。

「この……髪の1本まで、僕のだ。」
さらりと、結衣の髪を取り、口付ける。

「結衣さん、責任取って。僕をこんな風にしたのはあなただ。」
「私も、知らないんです。こんな風に愛されたことはないから。なぜ、こんなに愛してくれるの?」

「その顔、その目、その声っ……、全部、僕を惹き付けて止まないんです。そのくせ、そんなことを無邪気な顔をして聞いてくる。その無防備な姿で、他の男の前で笑顔を見せたりするから……」
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