声と性癖
「大丈夫。結衣さん、ゆっくりしますから。」
「んっ…」

「ゆっくり、もすごくいいです。結衣さんっ…も、少し力、抜いて…。持っていかれそう…。」
艶を含んだ声で、耳に注ぎ込まれる声に結衣は唇を噛み締める。

ゆっくりするから、普段より余計に敏感になっている気もして。
激しくはないけれど、いつもより涼真の熱を感じる。

最初、強めに押し込まれたはずなのに、いつの間にか濡れた水音が部屋に響いている。
声を抑えているだけに、緩やかなベッドのスプリングの音と、結衣の下肢からの水音だけが部屋に響いて余計に肌が熱をもっていた。

「ねえ?結衣さん、知ってますか?もっと感じて、と言われると感度が上がるそうですよ。」
「……んっ、あ……」
結衣の堪えきれない声は、枕に吸い取られる。

その様子を見て、涼真は口元に笑みを浮かべた。
「もう一つあって……。ダメって言われても感度は上がるんですって。例えば今みたいに、声出しちゃダメとか。確かにそれ、本当みたいですね。結衣さん、とても感じている。」

柔らかい涼真の声のトーンや、時折掠れたような吐息や、囁き声と混じってゆっくりと中を味わっているような動きも、それに合わせて涼真を逃がすまいとする自分のはしたない動きも、全部全部感じてしまって、別に激しく突かれている訳でもないのに、ナカが収縮してぞくぞくんっと気持ちよくなる。
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