声と性癖
その場所ではおそらく涼真は通勤が遠くなってしまう。

「でも、そんなワガママな……」
「僕がそうしたいんです。そうしたら今よりもっと一緒に居られるでしょう?」
「ん……。」

もっと涼真のことを知りたいし、もっと一緒にいたいのは結衣も同じだ。

簡単な判断ではないけれど。
「私もです。私ももっと涼真さんのこと知りたいです。いいところも、悪いところも全部知りたいです。」

「結衣さん……。共有出来る時間は少ないですが、だからこそ一緒に居られる時間をとても貴重だと感じます。これから、あなたとたくさん素敵な思い出を作っていきたい。」
「はい、そうですね。私も。」
結衣は涼真の耳元に、自分の気持ちが伝わるといいと思って全力で囁く。

お互いに声だけ聞いてスタートした関係だったけれど、今はこんなに幸せなのだ。
確かに以前涼真が言った通り運命だったのかもしれない、そう思うとくすぐったい気持ちになって、結衣はくすくす笑ったのだった。
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