声と性癖
けれど、私服でホテルのロビーに現れた時から、蓮根は目が離せなくなったのだ。

結衣はオフホワイトの清楚なワンピースがとても似合っていた。
銀ブラするから、と少し昨日よりも可愛らしい印象のメイクなのも、たまらない。

ピンクの艶めいた唇と、柔らかそうな頬。
大きなくりんとした瞳は真っ直ぐに蓮根を射抜いてくる。

ウィンドウショッピングの最中も、欲しいものがあれば買ってあげる、と言ったのに、見るのが楽しいんですよ!と、本当に楽しそうに笑うのだ。


結衣を送り届け、自宅に戻った蓮根は、玄関に鍵類を置いてリビングに入った。

まずはメールアプリで無事到着したことを連絡する。
『良かったです。今日はありがとうございました。』
『こちらこそ。また、ご連絡します。』

そう返信しておいて、カバンからレコーダーを出す。
業務用のICレコーダーだ。
主に顧客との打ち合わせに使うものだが。

蓮根は、書斎代わりにしている部屋のパソコンに向かった。
音声をデータ化して、取り出す。
こだわりのヘッドフォン。

それをかけて軽く目を閉じ、椅子に深く座ってヘッドフォンから聞こえてくる声に耳を傾けた。

一見すると、クラッシックでも聴いているかのような雰囲気である。
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