声と性癖
「蓮根先生もお忙しいって仰ってましたよね?」
「本当に。僕は税理士なんて、季節労働者だから、と聞いていたんですよ。」
季節労働者って……、語弊が……。

「ただ、師匠は忙しい人でしたけど。でも、独立して、師匠のお客様を引き継いで、そのご縁でまた、仕事を頂いて、ってしてたら、とんでもないことになっています。」

確かに蓮根は、頭の回転は早そうだし、仕事も出来そうな人だ。

「無理、しませんでした?今日…」
「正直に言うとちょっとだけ。でも、リフレッシュも必要ですし、お陰でとても、頑張れましたから。」

そっかぁ。忙しいのに、日にち開けてくれたんだ…。

「やりがいはあるんですよ?それなりに。」
「大変だけど、やりがいあるっていいですよね。」
大変でもやりがいはある、というのは仕事をする上で、とても大事なことだと、結衣は思う。

「結衣さんも、でしょう?でなきゃ、会社に徒歩で行ける距離でなんて家借りないでしょ。」

そうかな?
蓮根は、ふっ、と笑って会話を切り替える。
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