頑固な私が退職する理由

 慌ただしくしている間に、1月下旬に突入。
 私たちのチームは今、クライアントである森川明菜社長をお迎えして、ネイルシールのサブスクリプションサービスについてのプレゼンを行っている。

「ーー簡単かつお安くネイルアートを楽しめることを全面に押し出したいので、それがわかりやすく伝わるサービス名を、いくつか候補として考えてみました。次のページをご覧ください」
「ーー定期的にサロンに通っているようなネイル意識の高い人は、利用する・しないにかかわらず一度は気にしてチェックすると思うんですよ。そんな人たちの中には、ハンドはサロンだけど、フットはセルフという人も多くいるはずです」
「ーーという風に売り出すことで、ネイルサロンと敵対するのではなく、共存することが十分に可能となります。こちらの方が、明らかにメリットが多いと思いませんか?」
「次に、具体的にかかるコストについてですが、こちらは青木から詳しくご説明いたします」

 メインプレゼンターを務めるのは久しぶりだったのだけれど、我ながらなかなかうまくいった。
「ご清聴、ありがとうございました」
 森川社長は感心したように拍手をしてくれている。
「こちらこそ、素晴らしいご提案をありがとうございます。この短期間でここまで煮詰めてくださるなんて、SK企画さんにお願いしてよかったです」
 森川社長は肩までのボブヘアーがとてもお似合いの華やかな美人で、年齢は青木さんと同い年。
 雰囲気は私が尊敬している先輩社員の菊池(きくち)さんに似ていて、派手なピアスを着け、柄物の服を着こなしている。
 社長という肩書きだけれどバリキャリっぽくはなくて、気さくで感じのいい女性だ。
「恐れ入ります。ウェブ主体のコンテンツは、早ければ早いほどいいですからね。目標通り、3月1日にはサービス始動できるよう、最善を尽くします」
 そのためには、早めに決めなければならないことがいくつかある。
 私たちはこのまま打ち合わせへと移行。
 相手が最高責任者ということもあって、話し合いはスムーズに進んだ。
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