【完】傷だらけのプロポーズ
苗字が一緒になって、夫婦になった。
隣同士の家がひとつになった。
関係値だけは変わらない。
「…明日は帰ってくるんだよな?」
玄関で見送る朝比奈は少し不機嫌そうに眉をしかめた。
「あらあ、私が居なかったら寂しい?」
「な…!別に寂しかな……いや、すこーしだけ寂しいかな?」
玄関の床に座り込んで、大きな目を瞬かせてジッとこちらを見上げる。 唇を少しだけ尖らせて、まるで子供が拗ねているみたいだ。
その顔を見て思わず笑ってしまう。 朝比奈は少しだけ素直になったかと思う今日この頃。
「それにしてもお前はいつまで経っても朝比奈、朝比奈ってよぉ…。 お前ももう朝比奈さんじゃねぇか…」
「だって夏樹なんて今更…。 私の中で朝比奈は朝比奈だし…」