【完】傷だらけのプロポーズ

今更’夏樹’なんてくすぐったい。 その名前を呼ぶのは15年間避けてきたのだ。

’朝比奈’を’朝比奈’と馴れ馴れしく呼ぶのは、私だけの特権にしていたい。 そう考えれば私って15年間成長がない。 もしかしてまだ気持ちは13歳のあの時のままなのかもしれない。

誰も呼ばない呼び方をして、彼を独占し続けていた気になっていたのだ。 それはとても子供染みていて、自分で笑える。


初めて出会った頃よりずっと身長は伸びて大きくなった朝比奈、なのに未だに歳の割に童顔であの頃とあんまり変わらない気がするな。

もしかしたら私達は、15年間ずっと変わらずに同じ場所に居たのかもしれない。 そしてこれからも変わらない場所に居る事を望むのだろう。

温かい場所を探していた気がする。 とっくに手に入れていた事にさえ気が付かず。


私はいつから朝比奈の事が好きだったんだろう。
もしかしたら出会ったばかりの頃からずっと好きだったんじゃないかな?
余りに近くにいすぎて、気が付けなかった。 

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