緩やかなオレンジ

「確定? 証拠もあるの?」

「スマホこっそり見たし、ラブホまで尾行したこともあるよ。相手の女の職場も知ってる」

「へー……」

先ほどよりは力のない声が返ってくる。さすがの慎吾もこんな話をされたら驚くだろう。
私も冷静に語れる自分に驚いている。
司さんの浮気はショックだった。けれど彼が子供を授からない私に興味がなくなってきていることを仕方ないと思い始めていた。

「離婚するの?」

「しない……かな」

「浮気されてんのに?」

「私にも子供ができたら変わってくれるかもしれない……司さん、子供が好きだから」

今度は慎吾から「へー」が返ってこない。呆れているだろう。みっともなく司さんに期待する私に。

「婦人科で検査したの。妊娠するのに何の問題もないんだって」

「相手の女が先に妊娠するかもしれないじゃん。そうしたら先輩の方から離婚してって言われちゃうんじゃないの?」

私は慎吾に向けて精一杯微笑む。それを見て再会してから初めて慎吾が動揺した顔を見せた。

「検査したのは私だけなんだ。きっと妊娠しない原因は司さんの方だと思う。だから、他の女と寝ようと妊娠しない……」

涙を堪えて笑顔を維持する。そうしないと慎吾の前で弱音を吐いてしまいそうだ。

「美紀が浮気に気付いてるって先輩は知ってるの?」

「知らないんじゃないかな。バレてないと思ってるよ」

女のところから帰ってくると司さんは必ず私を抱く。彼なりの罪悪感の消し方なのだろう。他の女と繋がったものを私の体にも入れる。そうして身も心も深く傷つけるのだ。残酷なほど無自覚に。

「私ともそれなりに夫婦の営みをするし。その後何事もなかったかのように不倫相手にLINE送ってるよ」

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