マシュマロより甘く、チョコレートより苦く
「×」
必要過多なことを書かずに素っ気なく記号で送ってくるのも彼らしい。
けど、別に今日くらいいいじゃん。
「今日までだって、ずっと我慢してきたじゃん」
と打ったが、それを送信する手が止まった。
だって、後で何を言われるか…もしくはされるか、わからないから。
私はそれを消して、代わりに端的に自分の意志を伝えた。
「お願い」
私は自分の意志を伝えるが、彼は
「ダメだって言ってるじゃん」
と聞いてくれない。
「莉桜」
気が付くと、輝羅くんが目の前に立っていた。他クラなのにわざわざここまで来たらしい。
「ちょっとこっち来て」
あまり優しくない手で腕を掴まれて連れてこられたのは、目立たない階段の端。
ここはみんなあまり使わないから、なにかされそうな予感がして怖い。
「莉桜」
彼が私に目を向ける。その暗い瞳に吸い込まれてしまいそうで、私は咄嗟に目を背ける。
けど、彼は私の頬を両手で包んで私と無理やり目線を合わせた。
「あのさ、俺がどう思ってるかわかるよね?」
その口調と表情から、ああ、やっぱり彼は怒っているんだって悟った。
「ご、ごめん…でも私、」
「いつもは従順なのに、そんなに三岡さんのことが好きなんだね。妬いちゃうな」