maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

しかしそのルックスに反してあまり笑顔を見せず、どちらかといえば無愛想な奴。

ただそれだけだった。

「それに、あの人女性社員からなぜか人気らしいの。もう面倒くさそうなニオイしかしないもん」

いつのも無表情とは全く違う、ぷくっと膨らませた柔らかそうな頬に視線が釘付けになる。

蜂谷の素の表情を目の当たりにし、目がそらせなかった。

「可愛い子は大変なのね。せっかくイケメンだったのに」
「ふふ、平野さんが可愛いって思ってくれてるだけで十分です。仕事も出来ない雰囲気イケメンなんて関わりたくもない」

可愛らしく笑いながら毒を吐いた蜂谷の声を聞きながら総務部の前を通り過ぎ、経理部に書類を渡した。


それからというもの、俺の目はどこにいても蜂谷を探すようになった。

うちの部署に備品を届けに来てくれた時はもちろん、社食でも、会社のエントランスでも、彼女がいないか無意識に視線を泳がせる。

彼女を注視していてわかったことは、とにかく目立たないように意識しているということ。

あれだけの容姿なら、社内でも浮いた噂のひとつやふたつありそうなものだが、それは全く聞こえてこない。

以前見たように、男からアプローチがあっても完全にスルーしているようだった。

特別親しい同期の女性社員もいないようで、人見知りなのかと思いきやそうでもない。

庶務課を始め、総務部の面々とは素を出して打ち解けている。他の部署に比べ年齢層の高い総務部で、蜂谷は大いに可愛がられているようだった。

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